大阪・ミナミで10日、通行人の男女2人が殺害された事件。逮捕された礒飛京三容疑者（36）は無言で何回も男性を刺し、近くにいた女性も襲った。「取りつかれたようだった」「本当に怖い」。目撃者は顔をこわばらせた。現場は居酒屋などの飲食店が多い通り。近くには買い物客らでにぎわう百貨店や商店があり、休日の繁華街は騒然となった。
　事件があったのは、南北に延びる心斎橋筋商店街の路地を東に百数十メートル入った場所。会社員の男性（32）は午後1時すぎ、近くで友人と待ち合わせ、事件を目撃した。当初、男が男性に馬乗りになって殴打していると思い助けに向かうと、「男が取りつかれたように刺し続けていた」という。
　「うつろな表情で無言のまま男性の肩や胸、脇腹などを何回も刺していた。白いシャツとジーンズを血まみれにし、ふらふらと歩いて今度は女性の背中や脇腹を2、3回刺した」と振り返った。
　近くのホテルで清掃していた男性従業員（45）は、「あー、あー」という男性の大きな声を聞いた。「けんかも多いから若いのが騒いでるのかと思った」。しかし、外に出ると、パトカーや救急車が次々と到着。男性は「飲み屋街なのでこんな時間の騒ぎは珍しいと思ったが、まさか殺人事件が起きるなんて」と驚いた様子だった。
　金券ショップの20代の女性は、窓の外の人だかりに目をやると、男性があおむけに倒れ、苦しそうに動いていた。50人ぐらいが集まる中、警察官が男性を救急車に乗せたという。女性は「本当に怖い」と声を震わせた。